急増する家族葬から見える現代社会の終わりなき問題とは

増加傾向にある家族葬

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家族葬が増えている。家族葬とは家族及び近親者のみで行われる小規模の葬儀である。1990年代から葬儀社によって発信され使われるようになった比較的新しい言葉であり厳格な定義はない。家族と近親者のみの場合だけではなく故人と親密であった知人が参列する場合もある。

 2015年2月号の「月刊仏事」にて発表されたアンケート結果では、葬儀全体の施行件数のうち一般葬が42%、家族葬が32%、一日葬が9%、直葬が16%、社葬が1%というものであった。東京を中心に展開している葬儀社アーバンヒューネスの施行した葬儀から算出したデータでは2014年に家族葬は61.8%である。一体なぜ家族葬は急増しているのか。

 

 (参考リンク)

「直葬への対応」に関する葬儀社アンケート結果 | 株式会社鎌倉新書

葬儀スタイル(規模)の割合 | エンディング・データバンク

 

1.故人との別れがゆっくりとできる

家族葬は故人との別れを悼む時間が取りやすいというメリットがある。

葬儀は家族や親しい人が亡くなった瞬間から始まる。菩提寺や葬儀社への連絡、葬儀社との打ち合わせ、通夜、告別式、火葬、とタイトなスケジュールが急遽組まれるのだ。一般葬も家族葬も同様の流れではあるが、一般葬の場合一般弔問客への対応に時間がかかる。葬儀の日程を伝える所から通夜、葬儀に至るまで一般弔問客に対応すべきことは多く、時間はあっという間に過ぎていく。

 家族葬はそういった一般弔問客への対応が少ないため、故人を偲び、別れを悼むことに集中しやすい。また、一般弔問客を意識する必要がないので儀礼的になりすぎない温かな葬儀を行うことも可能である。じっくり時間をかけて穏やかに最後の別れの時間を過ごすことができるのだ。

 

2.訃報を知らせる相手が少ない

故人の死亡年齢は年々高くなっている。日本はすでに高齢化社会ではない。超高齢社会と言われる状況である。日本が高齢化社会となったのは1970年である。WHOの定義において高齢化社会とは65歳以上の割合が7%の場合を指す。14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と言う。日本は2007年、世界に先駆け超高齢社会に入った。2015年には26.7%が65歳以上となっている。

 高齢化に伴い、故人の交友関係は薄くなっていることで連絡が取れない状況となっている場合がある。遺族は故人の交友関係の完全な把握は難しく、また希薄な交友関係において訃報を知らせる相手も少ない。そのため連絡が取れる近親者にのみ訃報を知らせることとなり、当然の帰結として家族葬が選択されるのだ。

 

(参考リンク)

平成20年版 高齢社会白書

第1節 高齢化の状況|平成28年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府

 

3.費用が抑えられる

2014年度において国民生活センター及び全国の消費生活センターによせられた葬儀サービスに関する相談では高価格、料金が最も多い件数となった。

 日本消費者協会による「第10回『葬儀についてのアンケート調査』報告書/2014年」では葬儀費用は平均で約189万円という結果となった。2009年では平均約231万円であったことを考えると低下の傾向はあるが、未だ高額であることには変わりがない。尚且つこの数字は家族葬や一日葬なども含める数字である。一般葬に限れば費用平均はさらに上がるだろう。40万円~100万円と言われている家族葬は金銭的負担が一般葬儀よりも低く抑えやすい。

 費用の面でも超高齢社会の影響は無視できない。高齢化の波は葬儀契約当事者にも及ぶ。葬儀契約当時者年齢は高齢化とともに高くなっており、国民生活センターの調査では2014年度で平均62歳である。人によっては退職し収入が年金のみであってもおかしくない年齢であり、高額な葬儀費用は大きな負担となりかねない。

 

(参考リンク)

葬儀にかかる費用はどれくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター

家族葬の費用“家族葬なび”

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20151217_1.pdf

http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120203premiums_1.pdf

 

家族葬増加に見る超高齢社会の影響

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家族葬急増の背景には故人とゆっくりと別れの時間を持つことができる、という意味だけではなく、超高齢社会の影響が大きい。超高齢社会の現代において費用対効果を得やすく合理的であり、尚且つ故人との別れの時間も取りやすい家族葬が急増することは当然といえる。

 家族葬は増え続けている。高齢化の影響が葬儀の形を変えていくほどに色濃く顕在化し始め、それはさらに増大し続けているのだ。そして今、葬儀は家族葬だけではなく、一日葬や直葬も増加傾向にある。直葬にオプションを付ける形で一日葬と直葬の間にあたるプランの需要も高まっている。

 私たちが寿命を迎える頃、一体どんな葬儀の形がスタンダードになっているのだろうか。